ポジティブ思考の落とし穴
ー他人は変えられないけど自分は変えられる。ー
ー起きてしまったことは変えられないけど、それをどう捉えるかは自分次第。ー
誰しも聞いたことのあるこんな言葉。
最初に僕が耳にしたときは「なんと素晴らしい考え方!」と素直に感動した。
実践してみると、確かに自分の行動が前向きに変わるし、周囲からも「物事をポジティブに捉えるよね」とか「どんな状況でも前向きに考えられてすごいよね」とか、好意的に受け止められることが多かった。
でも、こんな「ポジティブ思考」にも実は落とし穴がある。
ポジティブ思考に潜む落とし穴
それはズバリ、「感情の抑圧を招く可能性があること。」
(感情を抑圧することのリスクは、以前のエントリーにも書いたとおり。)
ポジティブ思考を僕なりに定義すると、
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①物事が起きる
↓
②認知(物事の捉え方)のフィルターを通してそれを解釈する
↓
③感情が生まれる
↓
④感情にしたがって行動を起こす
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という感情発生のプロセスの②を変えましょう、ポジティブな捉え方をしましょう、という意味だと思う。
論理的にはこのプロセスは正しいし、②の変換で③や④が変わるのも納得できる気がする。
でもよく考えてみてほしい。
大抵の場合、①から④までのプロセスは一瞬で処理される。
これまで染み付いている②のフィルターに従って、僕たちの中には反射的に感情が生まれる。
そんな中、あとから意志の力で②を変えようとすると、②を変換した後に生まれる感情と、元々反射的に生まれた感情はコンフリクト(≒矛盾)を起こす。
そして、後者は「ふさわしくない考え方」として、意志の力で“なかったこと”にしてしまうことがあるんじゃないか。
僕はこうして無意識に自分の素直な感情を“なかったこと”にし続けた結果、最後には
「本来、自分は何を感じているのか」
「今、自分はどういう感情なのか」
が本気でわからなくなった。
心療内科医に「あなたは自分の感情を10%も把握できていない」と宣告されたりもした。
一番大切なのは、自分の自然な感情を感じ続けること
以前のエントリーにまとめたとおり、感情の抑圧は本当に怖い。
自分を自分でいられなくしてしまう。
僕は、一人の人として「心の底から満たされるため」にいちばん大切なのは、ありのままの自分の感情を感じることだと気がついた。
物事を前向きに受け止めることは確かに大事だけど、それには正しい手順がある。
まず、自分の自然な感情を感じること。味わうこと。
その後、その感情を“なかったこと”にせずに、「そりゃあそんな気持ちにもなるよね」と認めること。
この2段階を踏んで初めて、「でも、こんな捉え方もあるよ?」と健全に認知を変えていくこと。
最初の2段階を飛ばさないためにも、ポジティブ思考になろうとしているときは自分の感情を抑圧していないかを常にチェックしなくちゃいけない。
「本当の自分はどう感じた?」
「最初の自分の感じ方を心のなかで否定してない?」
など、色々な質問を自分に投げかけながら、自分に嘘をつかないよう気をつけなくちゃいけない。
人として自然な感情を押さえつけてまで僕たちが守ろうとしているものは、本当に守りたいものなんだろうか?
自分自身に改めて問うてみよう。